開発ブログ · #03

サブプロ開発物語 #03

公開 2026-10-13著者 藤原 寛倫

前回は、行き止まりの話を書きました。誰も必要としなかった検索エンジン。落ちた決済の審査。そして、そのひとつひとつが「SubPro はどうあるべきか」を削り出してくれた話です。

その先で待っていたのは、これでした。作れた。でも、それがあることを誰にも伝える手段がなかった。

誰も教えてくれない部分

SubPro が動いた日のことは覚えています。よし、ここからだ、と思いました。ドメインを取って、いつでもお客がきてもいい状況に持って行った。たしかそれはクロードコードを初めて4ヶ月目くらいだったでしょうか。実はSubProが完成する寸前で一度、決済の審査が落ちてから、全く別のSaaSを何本も作りました。割と大きな受注仕事もやったりしました。しかし、自分の頭の中にあったのは、やっぱりSubProを世に広めたい。そればかりでした。

受注仕事で手に入れたお金で、新しく作ったSaaSの広告を打ってみたりしましたが、全然反応が取れず、数万円使った時点で嫌になって止めました。

これは今、AI でものを作っているあるある思います。この8ヶ月くらいで僕のようなバイブコーダーは山ほど増えたと思います。人員と期間が大幅に必要だったものが、ひとりで数週間でできる。そのアイデアが世界でウケるはずだと本気で信じていました。しかし現実は甘くないです。誰も知らない。誰も気がついてくれない。そんな日々を過ごして、来る日も来る日も何か新しいものを開発し続けていました。

すでに持っていたもの

そんな時、そういえば自分は柔術のブログでいろんな縁を得てここまできたことを思い出しました。

僕は何年も、日本語で柔術のことを書いてきました。自分のドメインがあり、日本のグラップラー向けの X アカウントもあった。今この記事を出しているアカウントです。ほとんどは、運営に関わってきた金古さんのサブスクの教則を宣伝するためのものでした。大きくはありません。でも、読んでくれる人はもういました。

当然の一手は、その人たちに SubPro を宣伝することです。書き始めました。

そして、書いている途中で手が止まりました。自分の読者に向かって「サービスを作りました」と言うのは、あの場所で僕がやってきたことではない。読者の誰かが欲しがっている情報でもない。

そこで、ずっと引っかかっていた別のことを思い出しました。

何年も引っかかっていたこと

日本に住んでいると、世界の柔術で何が起きているのかを知る手段が、ほとんどありません。

大会がある。誰かが勝つ。ルールが変わる。競技のお金の流れが変わる。その全部が、英語で流れていきます。日本のファンの多くがそれを知るのは、英語が読める数少ない人が X に書いてくれた時だけ。それ以外の経路は、事実上ありません。

その結果、日本の柔術ファンはかなり孤立しています。国内のことはよく知っている。でも世界のことは、断片でしか届かない。

僕はこれを、業界の問題として感じたわけではありません。友人を通して感じました。

日本から世界の舞台に出ていった友人がいます。海外の大会に出て、名のある相手と戦って、結果を出していく。それを近くで見ていました。

そして、それがどれだけとんでもないことか、日本ではほとんど誰も分かっていなかった。

彼が勝っても、響かない。その相手が誰なのか、その大会が何を意味するのか。「すごそうだね」で終わる。競技は世界とつながっているのに、情報だけが切れている。もったいないと思ったし、正直、腹が立ちました。

だから、ニュースサイトを作った

届ける手段が要る。そして、本来誰かがやっているべきことがある。二つの動機が同じ場所で重なりました。

作ったのは Let's BJJ World News です。世界の柔術とグラップリングのニュースを、日本語で読める場所。

はっきり言っておくと、これは片手間の宣伝ブログではありません。持てるものを全部つぎ込みました。私が3ヶ月くらい1日18時間かけて取得したAIでの開発技術を全部次込み、世界の柔術ニュースを集める・訳す・出すを自動で回す形に組み直した。

そして、思っていたより早く読まれ始めました。それまで作ったどのものより手応えがありました。

どこかで、意味が変わった

回していくうちに、予定していなかったことが起きました。日本語圏の外から、人が来るようになったんです。Xで記事を日本語でシェアしてたんですが、Xでは自動で翻訳されるので、記事を読みにきてたんです。

そこでこれはチャンスかもと思いました。これは日本向けだけのメディアじゃない。

振り返れば当たり前でした。柔術とグラップリングはアメリカから広がっていて、今も伸びている。選手も、お金も、注目も増えている。でもその全部が、英語の中で起きています。

英語に強くない言語の国は、まるごと飛ばされる。日本に起きたことが、ほかの場所でも起きています。

それはもったいないと思います。同情ではなく、損失として。

そういう場所には、まだ出てきていない強い選手がいます。世界で何が起きているかを知らずに練習するのと、知って練習するのとでは違う。誰が何をしているのか、どんな試合が評価されるのか。その情報がないだけで、才能の伸びは遅れます。

業界としても、まだずっと大きくなれるはずです。誰も見ていなければ、選手にお金は届かない。言葉だけで閉じている市場なら、それは開ける市場です。

だから作り直しました。Let's BJJ World News は今、日本語に加えて英語、フランス語、韓国語、繁体字中国語でも出しています。台湾、韓国、フランス語圏に届いています。

AI を使って、英語の外へ届ける。それが今のこのメディアの役目です。

解けていない問題はたくさんあります。翻訳の質。どのニュースを載せるべきかの判断。その言語で本当に読まれているのかの確認。全部これからです。うまくいっていると言えるところには、まだ全然いません。やる価値があることだけは、確信しています。

それでも、SubPro は泣かず飛ばずだった

ここで、もともとの動機を思い出してください。これは SubPro を売る手段として始めたものでした。

メディアは育ち、学ぶことも多かった。そして僕は、SubPro を人の前に出すことに戻りました。具体的には記事にSubProの記事を入れまくったのです。1日500人くらい見にきてくれてるので、反応はあるに違いないと思ったのです。

しかし、何も起きませんでした。

ここは正直に書いておきたいところです。自分で届ける手段を作っても、それが自動で売上に変わるわけではない。ニュースを読みに来た人は、ニュースを読みに来たのであって、動画サブスクの仕組みを探しに来たわけではありません。

その頃には、期待はかなり下げていました。日本の柔術の人たちの間で、ゆっくり知られていけばいい。それでいいのかもしれない、と。

一度も売り込まなかった友人

さっきの友人の話に戻ります。

前回の最後に書いた、主に動画を通して恐ろしく強くなった友人です。名前は岩本健汰。日本のグラップラーで、僕の友人で、本物のトップ選手です。FloGrappling の世界ランキングで77kg級9位。

彼は、SubPro を売り込む相手のリストに一度も入っていませんでした。

理由は簡単です。彼はもう自分でやっていた。Patreon で自分の会員制をやって、自分の指導を出していて、それが回っている。もう解決している人に解決策を持っていっても意味がない。僕は要らないだろう、と思っていました。

だから実際に持っていったのは、売り込みではありませんでした。質問です。SubPro というものを作ったんだけど、どう思う? 使ってほしいと頼んだわけではありません。正直な意見が欲しかった。使う人ではなく、意見をくれる人として見ていました。

ひとつ書いておきたいことがあります。彼は選手としてトップレベルにいます。それでも、アメリカのグラップラーと比べると、日本のグラップラーに流れるお金はずっと少ない。

これは彼の問題ではありません。構造の問題です。同じくらい強くて、同じくらい打ち込んでいて、同じ舞台で勝っている。でも競技が乗っている市場が違うから、返ってくるものが違う。そしてその市場の大きさは、さっき書いた「情報が英語の外に出ていかない」話とつながっています。見られていないものに、お金は払われません。

SubPro でやろうとしていることと、ニュースサイトでやろうとしていることは、ちょうどここで重なります。自分のメディアを持てない指導者と、世界から切り離された英語圏の外の読者。どちらも同じ問題です。取り残された人のところに、何も届いていない。

1か月後の返事

岩本は忙しそうな感じでした。各地でセミナーをしたり、試合をしたり、だから、完成したSubProのLPのリンクをLINEで送って、「こういうのを作ったんだけど、どう思う?」と数ヶ月前にJitstionaryの感想をもらって、色々と進化したSubProの感想をもらいたかったんですが、LINEを送っても1ヶ月くらい返事がないので、僕もすっかり忘れていました。

そして1ヶ月後ふいに返ってきたLINEには、僕が予想していたものではありませんでした。

「面白そうですね。僕がやりたいです」

意見ではありませんでした。いきなり手を挙げてくれたんです。

これは願ったりかなったりでした。

今、起きていること

だから急遽岩本用のSubPro開発に着手しました。

う僕の想像ではない。本物の選手が使って、ここを変えてほしいと言ってくる。作る側にとって、これはまるで別の世界です。この半年で一番大きな変化でした。

次回は、kentaiwamoto.com の話を書きます。岩本が何をこだわったのか。

この話は X でも公開しています。英語版は Substack で連載しています。

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